概要

　バラは、古くから今に至るまでイタリアの庭で最も一般的な花です。イタリアには少なくとも24種の野生バラが自生、分布していて、Rosa caninaは最も広く分布している種で生垣の低木、森の周辺、低木地などどこでも見ることができ、それに続いて、R.agrestisは弱酸性土の土地で見られます。ガーデニングや修景の場では、1950～1960年代に一般的に利用されていたハイブリッド・ティーローズ（HT）は、より華やかで用途の広い樹形で耐病性や環境条件に耐性があり、手のかからない歴史のあるオールドローズ再導入により最近の10年で次第に減ってきています。いくつかの公園や特に個人のバラコレクションが造られ、その結果としてバラの特に古い品種の販売に特化した多くのナーセリーができました。SOI（イタリア園芸学会）は2ケ所の認定されたバラコレクションがあるが、その数はもっと多く、ジャンフランコの植物学バラ園やカーラ・フィネスキ（イタリアのカヴリーリアにあるバラ園）、古代バラ博物館（モンタニャーナ）、ザ・ガーデンオブローズ（ロンツォーネ）、ヴァンクナエ・ロザエバラ園（ロッカンティーカ）、ローマ市のバラ園（1933年から国際バラコンテストを開催し、82回になる）が含められる。また、モンツァバラ園も忘れてはならないバラ園で、51回もの新品種のコンテストを開催しており、2004年には世界バラ会連合により優秀庭園賞を受賞しています。最後にファエンツァの試験的・教訓的な「ラファエレ・バッツォッキ」バラ園を紹介します。このバラ園は1990年代に造られ、2020年からボローニャ大学国際新品種コンテストを開催し、このコンテストでは特に益々暑く乾燥する地中海の環境下で手がかからず、ガーデニングに向く耐病性新品種を選ぶことを目的としています。

略歴

ボローニャ大学農業・食品科学学部の准教授で、観賞用植物の生産、温室下での植物生長の計画、人口照明、種苗場生産、緑地や公園、庭園の設計・管理について研究と教育を行っている。1990年代からオールドローズとモダンローズの修景バラに関心を持ち、低維持管理での適応性を審査（評価）している。現在、彼女はボローニャ大学国際新ばらコンテストの主催者兼科学的責任者で、今日までに第5回が開催されており、世界バラ会連合の支援を受けている。

概要

　病気の三角形によれば、植物が病気に犯されるのに３つの基本的な要素が組み合わされる必要があります。それは病気を引き起こすことができる病原体の存在、感受性のある宿主植物および病気になりやすい環境条件です。これらのうち、どれかが存在しなければ病気にはなりません。バラ属の野生種や品種は幅広い範囲の糸状菌、ウィルス、細菌による病気にかかりやすいものです。これらの病気はネクロシスまたは植物組織の壊死、生育不全または植物組織の徒長を含むバラへの病徴を引き起こします。ガーデンローズは一般的なガーデニングにおいて病気に弱いものとして長く認識されています。また、丈夫に育てるには農薬散布が必要なものとしても考えられてきました。バラを一般の人に広くアピールするためにも、バラは病気への耐性が必要です。世界のプロおよびアマチュアの多くの育種家は多年に渡り積極的に無農薬で選抜し新品種の導入を行ってきています。

　耐病性のあるバラを育てるためには、品種選択ばかりでなく、植栽場所、植栽幅を広げること　剪定、施肥や潅水などについての栽培経験も必要とします。これらのすべてのことがガーデンにてバラを丈夫に育てることに関係しています。

　この講演では、耐病性を改善するためにどのような育種がされてきたかということと、将来的に可能な手法について考察していきたいと思います。ここでは４つの一般的な病気である、黒星病（Diplocarpon rosae）、さび病（Phragmipedium tuberculatum）、うどんこ病（Podosphaera pannosa）、べと病（Peronospora sparsa）にしぼります。これらの病気はバラを栽培する人にとって最も大きな問題を引き起こしています。また、バラの栽培方法が病害抵抗性にどのように影響を及ぼしているかについて目を向けることとともに、利用しうる方法について提案します。

略歴

ニュージーランドばら会の現会長であり、出版物の編集者も務めている。パーマストンノースの国際ばらコンテストに深く関わっており、ばらの育種にも着手を始めた。ニュージーランド国内外の出版物の多くの記事を執筆している。

彼はマッセ―大学で応用科学（園芸学）の学士号を取得し、パーマストンノース近くのニュージーランド自生植物のナーセリーで繁殖責任者として勤務している。また、国際植物増殖者協会（IPPS）ニュージーランド地域の会長も務めている。

概要

　植物の耐病性は、病原体により攻撃され取りつかれた際に、植物がいかに抵抗できるか、その能力として定義されます。耐病性についての対策は様々で植物の種類により違い、植物と病原体との間での相互作用にも違いがあります。これは植物が病気への抵抗性を示す際に、植物体そのものの構造的な強さや病原体に攻撃されてから誘導される生物化学的過程における違いなど多様な防御の仕組みがあるからです。遺伝的に決まっている抵抗性には、量的な遺伝を示すもの（多くの遺伝子が関与しているもの）から、一つの遺伝子により決まってくるものまであります。一般に多くの遺伝子が関与している抵抗性は、単一の遺伝子によるものより持続性があります。

　バラはいろんな病原体や害虫に攻撃され、その抵抗性については他の植物と違いはなく、他の植物でより詳しく研究されているものもあります。過去数十年にわたるガーデンローズの重要な病原体への抵抗性についての数多くの研究では、多くの興味深い病害抵抗性が明らかにされてきていて、それらのいくつかは既に商業的なバラ育種の場面で利用されて来ています。そのうちのいくつかの例をここでは紹介します。しかしながら、耐病性育種への科学的アプローチは商業的なバラの育種では広く採用されているとはいえません。　　

　しかし、ドイツのADR試作のような国単位のプログラムまたはアメリカのEarth-Kind バラ試作は耐病性バラを選ぶ際の適当な手段であり、こちらもここで簡単に紹介します。

略歴

ボーフム大学、マールブルグ大学、ケルン大学で生物学を履修。1986年にジャガイモの分子マーカーに関する研究で博士号を取得し、1990年から1992年までシロイヌナズナの耐病性についての博士研究員として勤務。1993年には観賞用植物育種研究所で自らの研究グループを立ち上げ、バラやほかの観賞植物の遺伝解析に取り組む。2004年にはハノーファーのライプニッツ大学で分子植物育種の教授に任命される。彼の研究は主にバラやジャガイモ、ほかの作物のゲノム学と耐病性に焦点を当てている。

概要

　ローズ・ロゼット病は小さなフシダニ科のダニによって運ばれるローズ・ロゼット・エマラウィルスによって引き起こされます。この病気は北アメリカに起源し、1990年代初めに、景観植栽のなかのガーデンローズで甚大な枯死を引き起こし始めました。2010年代までには、ガーデンローズは何千株単位で枯死し、大きな造園会社は計画のなかにバラを植栽しないようにし始めました。2013年に、アメリカのバラ業界はその問題をより明確にし、解決する計画を描きだすために、すべての関係者を結びつけるローズ・ロゼット病会議を招集しました。このことは結果として、2014年に集中的な研究計画を開始するにいたり、現在まで続いています。最初の研究は、RRV（ローズ・ロゼット・ウィルス）診断、ローズ・ロゼットのエマラウィルスとそれを媒介するダニ（Phyllocoptes fructiphilus）の両方の生物学について基本的な知識、RRDをコントロールする管理手段を開発することで、RRD への抵抗性について100個体を評価し、抵抗性の遺伝的根拠を明らかにするための遺伝的集団を作り、RRD 抵抗性バラの育種を促すための分子ツールを開発すること、そして分布図とRRDの同定と管理に使える最高の情報を備えたウェブサイト（roserosette.org）を立ち上げました。ウィルス圧力やフィールドでのダニ密度を下げられる管理戦略があるとしても、利用しやすい最も望ましいアプローチはRRD抵抗性品種です。現在の研究は、RRD抵抗性バラの育種を促進するゲノムツールを開発するだけでなく、これらの遺伝子により調節されている抵抗性メカニズムを解明することです。

略歴

テキサスA&M大学園芸学名誉教授であり、ばら遺伝学のベイジー寄付基金長も兼務。1990年代初頭、ばら育種家で数学教授を退職したロバート・ベイジー博士と共にミニばらの父とされるラルフ・ムーア氏からの寄付によって強化されたバラ育種および遺伝学プログラムを開始。ローズロゼット病と黒星病への抵抗性のあるバラを開発する国家的プロジェクトを指導し、多倍数体作物育種においてゲノム情報を活用するための計算ツールの開発と統合、そして国立ばらクリーンプラントネットワークの確立にも携わった。