講義

5月20日(火)「アジアのバラ」

日本の育種家により育成されたバラ

上田 善弘 博士

福山市世界バラ会議推進室プロジェクトマネージャー、ぎふワールド・ローズガーデン理事

開催時間 8:30-9:15
概要

 日本では、バラの育種は19世紀半ばまでは実際には行われて来ていません。19世紀後半になって海外から導入されたばらの趣味家による交雑育種とともに、日本のバラ品種の改良は盛んになり始めます。20世紀半ばになると、この努力は京成バラ園芸の鈴木省三により先鋒づけられ、彼の育種は日本のバラ育種レベルをグローバルなレベルに高めることに狙いをつけたものでした。それ以降、プロとアマチュアともに若いバラ育種家が彼らの育種努力を積極的に前に進めて来ています。そのなかでも、木村卓功は最近のバラ栽培のトレンドを基に育種方向を見定め、耐病性に焦点をしぼった世界レベルの品種を意欲的に発表しています。

 小林森治は約50年間にわたり本当の青色のバラを育成すべく挑戦し続けて来て、いくつかの淡い紫色の品種を育成して来ました。日本のある醸造会社は遺伝子組み換えにより青いバラの開発を始め、2004年には1品種を発表しています。1978年に現行の種苗法(植物新品種保護法)に改正されて以来、新品種としての登録出願数は増え続けていています。

現在、日本の育種家により育成されたものがこの種苗法に基づき、毎年約30品種ほど出願されています。

 

略歴

福山市世界バラ会議推進室プロジェクトマネージャー、ぎふワールド・ローズガーデン理事。1993年にバラ属の分類学的研究において博士号を取得。長年にわたり、千葉大学園芸学部にてバラの遺伝と育種について研究と授業を行っており、2005年には岐阜県立国際園芸アカデミー教授に就任。

バラの遺伝資源探索研究のため中国、ラオス、イランなど数多くの国々を訪問。ぎふ国際ローズコンテストおよび国際香りのバラ新品種コンクールの審査委員長も務める。

歴史的な日本画に描かれたバラ

白砂 伸夫 博士

環境共生学博士号、倉敷芸術科学大学学長補佐、神戸国際大学教授

開催時間 9:15‐10:00
概要

 本講義では、数世紀に渡る日本のバラ文化の歴史を紹介したいと思います。一般に、バラは明治時代(1868-1921)に西洋から日本にもたらされたと理解されています。しかしながら、歴史的な日本画についての私の解析から、日本人は古くからバラを大切に育て、描いてきており、バラは日本で重要な植物であったことが分かりました。なぜ、このような注目すべき事実が今まで知られてこなかったのでしょうか。それはバラが西洋の植物だという先入観が日本の伝統的なバラ文化の理解を妨げてきたからです。

 講義の目的は、日本画に描かれたバラの歴史的な概観を提供することによって、この誤解を解くことと、日本のバラ文化の美しさとバラ絵画の美的表現を世界に伝えることにあります。

 例として、1603年に建設された京都の二条城には、バラを描いた11枚の襖絵があります。特筆すべきこととして、二条城の最も高位な「一の間」に赤いバラが描かれていることです。このことは、バラが如何に重要な植物であったかを示しています。また、私の研究で、ほとんどすべての有名な画家がバラを描いていることが明らかになりました。この講義を通して、日本の格調高い歴史的なバラの絵画を誰もが称賛するようになることを望みます。

 

略歴

環境共生学の博士号を持ち、倉敷芸術科学大学の学長補佐および神戸国際大学の教授を務める。

主な業績・設計:

・花フェスタ記念公園(現ぎふワールド・ローズガーデン) 世界最大級のバラ園

・ハウステンボス ローズガーデン

・アカオ・フォレスト ローズガーデン 他

主な受賞歴:

・世界バラ会連合 世界バラ会優秀庭園賞 「アカオハーブ&ローズガーデン」  

・世界バラ会連合 世界バラ会連合優秀書籍賞 「THE ROSE GARDEN」

・日本造園学会 学会賞 (設計作品部門 ローズガーデンの設計作品)

・ベルギー ゲント・フローラリー国際ガーデンショーでの第2位および特別デザイン賞 他

多数の著書も出版。

日本の野ばら、ノイバラから始まる物語 2 ランブラーローズ

御巫 由紀 博士

千葉県立中央博物館展示課長

開催時間 10:30-11:15
概要

 日本には16種類の野ばらが自生しています。そのうち最初に学名がつけられたのはノイバラで、来日したスウェーデン人の植物学者ツュンベリーが1784年に命名しました。

 このノイバラから始まるバラの物語を2回に分けて紹介します。1つめは2024年7月にカルマル(スウェーデン)で開催された世界バラ会連合地域大会にて、ノイバラから作出されたポリアンタ系統のバラについてお話ししました。2つめが今回、2025年福山にて、ノイバラから作出されたランブラー系統のバラの物語です。

 

略歴

千葉県立中央博物館展示課長。世界バラ会連合ヘリテージローズ保存委員会前委員長。国際香りのばら新品種コンクール(国営越後丘陵公園)審査員。NPOバラ文化研究所理事。園芸学会会員。

千葉県出身。日本女子大学で生物学、千葉大学で園芸学を履修。千葉大学での大学院生時代、著名なバラ育種家である鈴木省三(1913-2000)氏から多方面で支援を受け、特に野生バラとオールドローズに興味を持つようになる。

 

博士論文:バラ属のフラボノイドの化学分類的な研究

最近の論文:不快な香りのバラ、ロサ・フェティダの香りの成分の分析(2023, Hort. J.)

      ヤマミヤコイバラ;サンブジナと愛知県のミヤコイバラの新しい交雑種(2011, J. Jap. Bot.)

世界バラ会連合優秀書籍賞(2022):「野ばらハンドブック」

中国の野生バラとオールドローズ

姜 正之

中国

開催時間 11:15-12:00
概要

パート1:私たちがこれまでに収集してきた中国の野生で珍しいバラを紹介します。例として、ロサ・クアンツンエンシス

Rosa kwangtungensis(広東薔薇))、ロサ・アネモ二フロラ(Rosa anemoniflora(銀粉薔薇))、ロサ・キネンシス・

スポンタネア(Rosa chinesis var. spontanea)など。一方で、それらの種の分布地域、現在の生存状態、栽培経験についてお話しします。

パート2:これまで収集してきたいくつかの二倍体中国古代バラと、どのように中国古代バラとして定義づけたのかについてお示しします。

パート3:現存する古代バラがどこに起源するのか。 どのような野生バラが進化の研究の進歩に関わってきたか。一重咲きの花、ロサ・キネンシス・スポンタネアが古代中国バラの進化において、どのような役割をしてきたか。

パート4:長年にわたって、野生バラを使い栽培してきた交雑種を紹介します。そして、どのように私たちは日ごろの仕事を完結しているのかをお話しします。

 

略歴

中国のバラ育種家。「Langrosa」ブランドの創設者。20年近くバラの育種に注力し、野生バラ資源の収集、保存、開発に打ち込んでいる。何年にもわたる努力により、300種を超える野生バラの保存を行っている。主な研究方向は高湿度・高気温の気候に耐えうる新品種育成である。

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