世界バラ会議

世界バラ会議福山大会シンポジウム「世界の中の『ばらのまち福山』~世界バラ会議福山大会に向けて~」

開催日 2023年3月18日(土)
時 間 13:00~
場 所 広島県民文化センターふくやま
開催レポート
2023年3月20日(月)
【世界バラ会議福山大会実行委員会主催 800日前イベント】

3月18日(土),広島県民文化センターふくやまにおいて,シンポジウムを開催し,約220人の方が参加されました。

【第1部】世界バラ会議福山大会で変わる!SDGsを意識した花と緑のまちづくり


●基調講演 「花と緑によるまちづくりの推進」

 五十嵐 康之さん(国土交通省大臣官房審議官 〈都市生活環境・2027国際園芸博覧会〉)

【講演スライド】

【YouTube動画】

https://youtu.be/MID4JaZegwU

https://youtu.be/MID4JaZegwU



令和元年から開始した『ガーデンツーリズム』事業は,日本各地にある庭や花壇を紹介することにより,その地域を周遊いただく取組。まちづくりとガーデンツーリズムは非常に親和性が高いです。

 

『観光』というものが大きく変化をしてきています。今までの観光では,「モノ」を「見る」ことが中心でしたが,その後「コト」,つまり様々なことを体験する観光へと変化してきました。更にコロナ禍を経て,今は「意味」,どういう意味で観光するか。「見る」観光から「行う」観光,そして,「自分に紐付ける」観光に変わっていると言えます。

 

「意味」の観光は,ストーリー・テーマが重要であり,『ガーデンツーリズム』事業では今2つの部門を運用しています。一つは『周遊部門』として,一つの市町村域を超え,車や電車で複数地点を周遊する観光をするもの。もう一つが『探訪部門』として,もう少し小さい圏域内で,オープンガーデンなど数多くのガーデンを周遊いただくものです。

 

日本政府観光局JNTOが調査した,日本への来訪目的の1番は食,2番はテーマパーク,3番は美術館,4番目がガーデンです。海外からの観光客には,日本の庭園や各地の花の名所を巡りたいという非常に強い観光動向があり,福山で実施されている,ばらのまちづくりや世界バラ会議の取組は,世界の観光ツーリズムの動向から見ても,非常に意味のあるものだと思います。

また,国内に目を向けても,コロナ禍以降,個人が自らの身近な暮らしや楽しみを考える機会が増える中,庭・ガーデン,或いはばらというものが,ライフスタイルの中でも大事なものという認識をされています。

 

観光というのは『モノ』から『コト』そして『意味』へと繋がっています。この『意味』の一番大きな要素として,人と人の繋がりがあります。例えば,訪問先でのやりとりが印象に残り,それがリピートの要因となる,といったこともあります。

『ばらのまち福山』は,戦後復興期に,8割を焼失したまちをどうしていこうかと考えた市民の皆さんが1,000本のばらを植えたことから始まった―。これはとても大きな『意味』であり,歴史です。2025年の世界バラ会議にどういう『意味』を持たせるかが大切です。

例えば小学校の子どもが自分たちで植えたばらを,海外の人たちが見に来てくれて,たどたどしい英語でご挨拶をした。それは,きっと『観光』としては再訪の大きな動機づけになりますし,『まちづくり』としても,子どもたちが大人になった時に,ガーデンやばらをやろうとする動機付けになるかもしれません。その意味でも2025年という機会が,戦後復興のばらと同様に,新しい次の世代の『ばらのまちづくり』のきっかけとなるのではないでしょうか。そして,それは外から来る人の心を打つ,一つのキーワードにもなると思います。

 

2025年には大阪で大阪・関西万博が開催されます。大阪・関西万博,そして花をテーマに福山で開催される世界バラ会議福山大会2025の勢いをつなげて,2027年に横浜で開催する国際園芸博覧会では,「幸せを作る明日の風景」を全国から世界へ発信をしたいと思っています。

●トークセッション 「花と緑を活用したウォーカブルな公共空間の形成」


 五十嵐 康之さん(国土交通省大臣官房審議官)

 上田 善弘(福山市世界バラ会議推進プロジェクトマネージャー)



基調講演ではガーデンツーリズムについてお話いただきました。本市でも,ばらを中心としてガーデンツーリズムへの登録を考えていますが,ご紹介のあった2つの部門『周遊部門』と『探訪部門』では,どちらが相応しいか,お考えを聞かせてください。広域に備後圏域を巡っていただくやり方や,福山のばらで完結するというやり方もあると思います。

 

ガーデンツーリズムには,一つの市町村を主にベースとする『探訪型』と,それを超えて広域を巡る『周遊部門』の2部門があります。探訪型にするならば,より地域密着で,個人の顔を見せるやり方がいいでしょうし,他方,周遊型では,対象とする『花』の領域を,ばらに限らないものにすることもあり得るでしょう。そうした戦略感はすごく大事だと思っています。

 

ただ探訪型(=マイクロツーリズム型)を選ぶ場合も,例えば駅前やその周辺だけ,或いは特定の庭園だけで留まってよいかといえばそうではなく,探訪型で誘客したエリアから,更に周遊型(=広域)へ波及させていくものだと思っています。

 

周遊型というのは市域を超え,圏域を超えた大きな『輪』を作るものですが,反対に,その『輪』の中を細かく見たときには,探訪型のテーマづくりへの気配りも必要です。今回,福山が『ばら』をテーマに考えられる場合,このどちらを選んでいくのかは,我々としても関心を持っています。

 

 

福山はばらのまちですが,その中でどんなウォーカブルなまちを期待されますか。

 

将来どんなまちを作るかというのは市民の方々が決定されることだと思いますが,我々のように,『花』と『緑』の力を信じる立場からは,福山市が社会実験で実施したような,芝生(=緑)を作り,学校でもなく家でもなく職場でもない,サード・プレイスを作るというのはとても良いことと思います。そのサード・プレイスの中から,更に新しい価値を創造できるというのは面白いことだと思います。

こういう場所では普段の繋がりとは違う新しい横の繋がり・縦の繋がりが生まれ,波及をしていきます。是非サード・オープン・スペースをどう使うか,という観点を持っていただきたいです。そこに更に『ばら』との組み合わせ方を考えると様々なアイデアが出てくるのではないか,と思います。

 

―花と緑は都市インフラの一つだと考えますが,全国の事例等から,その位置づけをどうすればいいか,そして,インフラを考える中で,世界バラ会議にはどのような意義があるとお考えですか。

 

緑は『グリーン・インフラ』であり,まさにインフラ,社会の共通的な資本だと思ってます。そういう意味では,ボランティアも同じ社会資本です。2025年は世界の方々が福山に集まってばらのことを語る,ということにも意味がありますが,もう一つ,戦後『ばらのまち』を作ってきた人たちからの世代交代を,2025年をきっかけに出来るということが大きいことだと考えます。2025年,『僕は・私は小学生だったけれど関わったよ』という一つのきっかけが,次の新しい世代の交流につながっていきます。ボランティアは,決して人のためにやるだけでなく,自分の人生のためにやること,そして,楽しいことだと認識してもらえると良いと思います。

 
【第2部】世界バラ会議福山大会とおもてなしのまちづくり トークセッション

 宇田 貴美さん(一般社団法人福山青年会議所顧問)



世界バラ会議福山大会は,外国からのお客様を含む700名の方が,1週間に渡って福山に滞在する本格的な国際会議です。こうした国際会議など,多くの人が訪れて交流するビジネスイベントを総称して『MICE(マイス)』といいます。Mは企業などの会議(Meeting),Iは企業などが行う褒賞・研修旅行(Incentive Travel),Cは今回の世界バラ会議のような国際機関・団体,学会等が行う国際会議(Convention),Eは展示会・見本市・イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語で,これらのビジネスイベントの総称です。

MICE開催がもたらすメリットは複数ありますが,人が集まることによる経済効果はもちろん,国内外から専門家などが集まるので,交流の中でビジネスやイノベーションの機会を呼び込むことが期待されています。

コロナ禍を超えて,改めて現地に行って交流するということの価値が見直されている中で,福山をもっと元気にするためのツールの一つとして,MICEの誘致ということがキーワードとなっていきます。

この影響は福山だけでなく,近隣の自治体など広域に及ぶのではないかと考えています。

 
 堺井 啓公さん(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 機運醸成局長)



―広く日本全体に絶大な影響を与える,2025年日本国際博覧会,大阪・関西万博への機運醸成と,大阪・関西万博をきっかけとした地域活性化に取り組んでいらっしゃる堺井様から,お話をいただけますでしょうか。

 

5年に1度,半年間に渡って,多くの国が参加する世界的ビックイベントが,2025年に日本にやってきます。ちょうど世界バラ会議福山大会も2025年に開催されますし,3年に1度開催の瀬戸内国際芸術祭も2025年に開催ということで,世界からの注目を集め,世界中の皆様を迎えるイベントが2025年に集中的にやってきます。

 

今回大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマを掲げていますが,日本では,古くから「持続可能」ということを意識しながら,自然との共生が実践されてきました。その風土の上に,素晴らしい歴史・文化・産業などが成り立っています。そしてまた,ばらや植物を育て,或いは公園を整備しながら心を育んできた姿を,世界の方にしっかりと見ていただきたいと思いますし,世界の方も,それを期待していると思います。

 

特に海外から大阪・関西万博を訪れた方には,少なくとも1箇所は,我々日本人が自然との共生を実践し,文化,芸術,歴史,産業などを育んできた地域を訪れていただきたいと思っています。このため,地域での生活を体験できるのを旅行商品として作り上げ,万博に来場するお客さんにお勧めし,それを体験してもらうことを考えています。

 

福山市におかれましても,是非,世界バラ会議福山大会や万博も開催される2025年を目掛けて,世界の方が行きたくなる地域となるように取り組んでいただけると幸いです。

 

―大阪・関西万博という機会をどう生かせば,日本の未来を変えることができるのか,教えていただけますでしょうか。

 

大阪・関西万博では,『TEAM EXPO 2025』というプログラムを用意しています。

未来を変えていくのは,ある方向に向かって,それぞれの方がアクションを起こすことから始めていく,そして,それがうねりになり一つのムーブメントを起こし,それが社会において定着していくことで未来が変わるのだと。

多くの方が考える「理想とする未来社会」を実現するために,現在ある課題を解決して未来社会を創造するアクションを起こす人がどんどん出てきて,また,それに加わる方も出てくる,そんな仕掛けを『TEAM EXPO 2025』として用意しています。

これは多くの方に参画いただけるものであり,既に1,000件を超える共創チャレンジが登録されています。

半年間の万博開催時だけではなく,開始前の現在から,一人ひとりが理想とする未来社会を宣言して,その実現に向かって動き出すことで,日本の社会を変えていこうという取組みに,皆さまも参加いただければと思っています。

 
 苗村 淑子さん(大阪成蹊大学客員教授)



―これまで数多くのMICE開催に携わってこられた苗村先生から,2025年福山に世界のみなさまをお迎えするにあたり,どんなことを大事にしていけばいいか,アドバイスをいただきたいと思います。

 

世界バラ会議は,福山の方々にとって,初めての国際会議かもしれません。それは同時に,海外から日本にいらっしゃる方にとっても,初めての福山かもしれません。

海外からいらっしゃる皆さんに,2025年5月18日から24日という1週間を如何に心地よくお過ごしいただくかを考え抜き,歓迎と感謝の気持ちを込めて伝えるということが,一番のおもてなしではないかと思います。皆さん一人ずつ,『私は福山国際観光大使』という気持ちを持っていただければと思います。

世界バラ会議は約40か国から参加されます。この方々に対して市民の皆さん一人一人が,世界中に福山ファンを作るんだ,という心意気と笑顔,歓迎の気持ちで接していただくことが,大切なことだと考えています。

 

自分から笑顔で声をかけて,相手に寄りそうということがおもてなしに繋がりますし,会議が開催されるまでの間,レストランや道案内をできるよう,簡単な福山おもてなし一言英会話のようなものがあれば,その後も使えて便利だろうと思います。

例えば,私の住んでいる京都では,ありがとうの代わりに,「おおきに」という言葉をたくさんの人が使います。簡単な言葉なので,海外から来られたかたも,すぐ覚えて使ってくださいます。そうしますと,お互いの距離が縮まってそこに国際交流が生まれていきます。

 

今回のバラ会議は福山城やホテル,ばら公園,リーデンローズ,ローズアリーナと市内全域で開催されます。これは地域全体を大きく捉えた,福山ならではの『エリアMICE』であり,まち全体が大きな舞台になるということです。その舞台に必要なのは人がワクワクしながら交流し情報を発信していくということです。

 

国際会議は限られた特別な人だけが参加するものではなく,みんなで作り上げるものです。そのチャンスは,大人だけではなく,小学生から高校生までみんなに活かしてもらうことが,国際感覚を養うことにつながります。福山の知名度やブランド力が上がることで,経済効果やビジネスチャンスが生まれますし,今回の成功が,次の新たなMICEの誘致につながるということもあります。ただ,国際会議は参加者だけではなく,市民みんなで作るものです。不安や心配があったとしてもそれ以上に楽しいことや思い出になることが沢山あると思います。ぜひ皆さんご一緒にワクワクしながら世界バラ会議を迎えていただきたいと思います。

 

―国際会館以外でもたくさん国際会議をされてきたと思いますが,数十年にわたって見て,開催して来られ,これによって京都の町がどう変わったのかということを教えていただけますか。

 

国際会館,或いはそこで開催される国際会議の役割は,会話ではなく『対話』を生むということです。会場だけに留まらず,京都の全体が,世界共通の課題を話し合う舞台を提供しているということが一つのポイントです。京都に住む人々は,歴史がある,海外からたくさんの方が来てくださる,ということだけでなく,そこから世界に向けて情報発信をできる街なんだという気持ちを誇り高く持っていると思います。

そこに住む人たちが,誇り高い気持ちを持つことが,都市の持続可能性に繋がります。

大型の国際会議であれば約180か国からの参加があります。開催期間中,そうした沢山の人が街にいることに慣れていくことも大切なことだと思っています。

 
 原田 憲太郎さん(一般社団法人福山グローバルパートナーシップ協会 代表理事)



―MICEという言葉が浸透していないころから,数多くの国際会議に出席経験のある,原田アドバイザーに,国際会議ではどのようなことがポイントになるのかお伺いしたいと思います。

 

人口が伸び,経済が伸びている時代では,うまくいっている他の市町の事例を研究し,そのまま真似ればうまくいっていったんです。そのような時代を人口ボーナス期と言いますが,今日私たちが直面しているのは,人口オーナス(onus=負荷)期。加速度的に人口が減る時代では,何か新しいことをイノベーションを起こしながらやっていかないと生き残っていけない。今まで誰も経験をしたことのない時代に入っています。イノベーションをどうやって起こすか。一見関係なさそうな事柄を結びつける思考,つまり,自分たちが既に知っていることと,全然知らなかったことを結びつけることによって,イノベーションを起こしていくことができます。

 

これが世界中でダイバーシティというものが流行っている理由ですが,福山でMICE,国際会議を開催する真の目的というのは,遠くから来る人々の全く異なる文化や考え方を取り込んで福山の現実と組み合わせてイノベーションを起こしていき,この難しい時代でも生き残っていく持続可能な街を作っていくことにあるのだと思います。

 

福山青年会議所の活動として,この20年間でずいぶん多くの数千人規模の大会に参加し,国際会議を見てきて,成功したものと成功していないもの,だいたい2つに分かれてました。

 

成功したものはどういう大会だったかというと,多くの市民を巻き込んで一緒にやってる大会。これは成功しています。大会が盛り上がっただけで終わるのではなく,その後町が変わっていきます。改めて5年後見てみると,ずいぶん街の姿が未来に向けて変わっていっている様子が見て取れます。

 

失敗した大会は,市民を全く巻き込むことができなかった大会。市民を巻き込むと,市民の皆さんが世界の異なる文化に触れて,異次元の体験ができ,それがイノベーションの素になり,まちが変化していく。市民を巻き込むことができなかった大会では,その逆のことが起こる,ということになります。

 

世界バラ会議も,福山市の市役所の皆さんと,これまでばらのまちづくりを創りあげてきた諸先輩方が頑張れば,なんとか形にはできるだろうと思います。ただ,それではもったいない。それでは,世界バラ会議が将来の福山の宝になることはないし,市民のためにもならないと思います。

だからこそ,多くの市民に参画していただいて,市民の皆さんに普段ではできない異次元の体験をしていただく。このまちが将来に向かって変わっていける大きな原動力となるような大会を皆さんと共に作っていきたいと考えています。

 

【全体司会】


  糸永 直美さん(広島テレビ放送株式会社)



 

 

 

 

 
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